知の快楽 哲学の森に遊ぶ
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日本は失敗の見本?




このイラストは英誌エコノミスト最新号の表紙を飾っているものだ。Turning Japanese と題したカバーストーリーは、最近の欧米の経済危機とそれをただただ座視するのみの指導者たちの無能ぶりを、日本のかつての経済危機とそれをなすすべもなく呆然と見ていた日本の指導者たちに重ね合わせて批判している。

つまり日本は欧米にとっては失敗の見本であり、あってはならない姿としてとらえられているわけである。

記事は言う、今の欧米の指導者たちは、危機に立ち向かってそれを克服する気概に欠けている。彼らは国民をリードする能力に欠けているからこそ、国民に追従して、舌触りのいいことばかり言っているのだと。

そんな情けない指導者の典型がオバマとメルケルということなのだろう。オバマは債務上限問題を巡って議会を説得できず、明らかにわかっている破滅の道筋をあえてたどろうとしている。メルケルは、ユーロゾーンを見舞っている経済危機について、その真の原因を突き止めたうえで抜本的な改革を実施する気力も能力もない。ただ目先の不具合に蓋をしようとする姿勢に終始しているだけだ。

こんななかで、情けない指導者の脚を引っ張るもっと情けない輩がいる。オバマの場合で言えばそれは議会に巣食う共和党の守旧派であり、メルケルにとっては、それは既得権益の上に胡坐をかいた勢力である。記事はそういう連中を知的ピグミー(Intellectual Pygmies)と呼んでいた。

この言葉に接して、筆者はちょっとした興奮を覚えた。この言葉はたしか、日本のロシア革命研究家渓内謙が、レーニン死後スターリン体制の確立を担った連中をさして使っていた言葉ではなかったかと、思い出したからだ。渓内謙は気骨のある歴史家だったが、その彼によれば、レーニンによって表現されたロシア革命の遠大な理想を、スターリンとその徒党が汚したということになる。レーニンが偉大な思想家であったとすれば、この連中は知的ピグミーに過ぎなかったのだと。

もしかして、筆者がそう思ったのは間違っているかもしれない。この言葉はスターリン体制をこき下ろす罵り言葉として古くから使われていたものを、渓内謙が借用したにすぎなかったのかもしれない。それでもやはり、物わかりの悪い連中を表す言葉としては、非常に洒落た言葉だと、筆者は改めて感じた次第であった。




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